オランダ人写真家 Maurice ScheltensとLiesbeth Abbenesによる最新刊『Zeen』は、2019年3月よりアムステルダムのFoam写真美術館にて開催される同名の展覧会『Zeen』に合わせてCase Publishingより刊行された出版物です。
Case Rotterdamでは、製本前のページを素材に、収録された作品のイメージを壁面に貼り付けたインスタレーション。および、表紙に使用されたエンボスプレートなどをご覧いただけ、より深く写真集のコンセプトを理解できる展示となっています。

<写真集『Zeen』について>
本書は、独立した一つの写真集として十分に完結していますが、今回の展覧会へと繋がる共通点が多いことに気付きます。それは来場者や読者が、身の周りに存在するものに対して慎重に、時にはミクロのレベルで細部までそれらを観察するように促されるという点です。Esther de Vriesによる本のグラフィックデザインもまた、このような意識的な観察をさまざまな方法で奨励しています。これまでScheltens & Abbenes はエディトリアルデザインとしての作品を数多く手掛けてきました。しかし、彼らの作品は一貫した審美性を持っているため、個々の作品がたとえ別々のシリーズ同士であっても、制作年や文脈に関わらず、互いに融合することができます。このように、イメージは相互に影響を及し合い、作品に隠された視覚的なレイヤーを明らかにしていきます。『Zeen』では、各作品が最初に発表された出版物を複製することで、それぞれのイメージが作用する様々な文脈を解明していきます。そしてそれらの文脈が、観察や解釈の形成にどのように役立つのかを読者に気付かせるのです。あるイメージは二回登場していますが、他のイメージと並べることで別の側面が新たに浮かび上がってきます。これらのプロセスを通して、Scheltens&Abbenesは一貫した方法で、個々の作品とそれらの周りに存在するものとの関係性を明確にしています。

’Zeen’とはオランダ語で腱や繊維を表す解剖学用語で、「筋肉に付着して骨に強度を与える丈夫で柔軟な組織」を意味します。この説明は、カメラが本質を捉えるためにどのようにして被写体の内側に’Zoom’(ズーム)し、物質を解剖したのかを比喩的に表現しているため、この単語が持つ意味、語源、響きはScheltens&Abbenesの制作過程ともリンクし、彼らの興味を強く惹きつけました。さらに解剖学用語だけでなく、’Zen’(禅)、’Zein’(見る)、’Magazine’(雑誌)といった単語からも着想を得ています。

Artist

シュルテンス&アベネス Scheltens & Abbenes

Liesbeth Abbenesは1970年オランダ、アステンに生まれる。1993年ヘリット・リートフェルト・アカデミーを卒業し、1994年から1996年までオランダ国立芸術アカデミーで学ぶ。Maurice Scheltensは1972年オランダ、アペルドールンに生まれる。1995年ハーグ王立芸術アカデミーを卒業。LiesbethとMauriceは2002年よりコラボレーションを行い、現在(2人の子供たちと)アムステルダムに居を構え創作活動に励んでいる。