Zeen
- 判型
- 170 x 225 mm
- 頁数
- 426頁
- 製本
- ソフトカバー(エンボス加工・箔押し)
- 発行年
- 2019年
- 言語
- 英語、日本語
- ISBN
- 978-4-908526-23-7
オランダ人作家 Maurice ScheltensとLiesbeth Abbenesによる最新刊『Zeen』は、2019年3月よりアムステルダムのFoam写真美術館にて開催される同名展覧会に併せ、Case Publishingより刊行される出版物です。本書は、独立した一つの写真集として十分に完結していますが、今回の展覧会へと繋がる共通点が多いことに気が付きます。それは来場者や読者が、身の周りに存在するものに対して慎重に、時にはミクロのレベルで細部までそれらを観察するように促されるという点です。Esther de Vriesによる本書のグラフィックデザインもまた、このような意識的な観察をさまざまな方法で奨励しています。これまでScheltens & Abbenes はエディトリアルデザインとしての作品を数多く手掛けてきました。しかし、彼らの作品は一貫した審美性を持っているため、個々の作品がたとえ別々のシリーズ同士であっても、制作年や文脈に関わらず、互いに融合することができます。このように、イメージは相互に影響を及し合い、作品に隠された視覚的なレイヤーを明らかにしていきます。『Zeen』では、各作品が最初に発表された出版物を複製することで、それぞれのイメージが作用する様々な文脈を解明していきます。そしてそれらの文脈が、観察や解釈の形成にどのように役立つのかを読者に気付かせる作用を生み出しています。あるイメージは二回登場していますが、他のイメージと並べることで別の側面が新たに浮かび上がってきます。これらのプロセスを通して、Scheltens & Abbenesは一貫した方法で、個々の作品とそれらの周りに存在するものとの関係性を明確にしています。
*“Zeen”とはオランダ語で腱や繊維を表す解剖学用語で、「筋肉に付着して骨に強度を与える丈夫で柔軟な組織」を意味します。この説明は、カメラが本質を捉えるためにどのようにして被写体の内側に“Zoom(ズーム)”し、物質を解剖したのかを比喩的に表現しているため、この単語が持つ意味、語源、響きはScheltens & Abbenesの制作過程ともリンクし、彼らの興味を強く惹きつけました。さらに解剖学用語だけでなく、“Zen(禅)”、“Zein(見る)”、“Magazine(雑誌)”といった単語からも着想を得ています。
【CONCEPT OF ZEEN】
彼らの静物写真に現れる手で触れられるような感覚は、本のカバーに施されたエンボス加工と箔押しの文字に反映され、収録されている一連のイメージの流れは、読者が本の中を冒険するよう誘います。各ページに記されたコードから、彼らに作品を依頼したクライアントを参照することができ、インデックスでは読者がより多くの情報を検索できるようになっています。このような表やコードが持つ商業的な審美性は、工業製品の卸売カタログを想起させ、工業デザインからもヒントを得ていることがわかります。また、『Zeen』ではLouise Schouwenbergによるエッセイが3つのセクションに分けられているのが特徴です。本文は英語と日本語の両言語に翻訳されているため、右綴じ・左綴じ、表紙・裏表紙の区別はなく、読者はどちらの方向からでも読み進められる構成、デザインとなっています。