Dead End -「十間坂」<手宮地区−小樽市>

谷口能隆
判型
283 × 264 mm
頁数
93頁、掲載作品 44点
製本
ハードカバー
発行年
2020
言語
日本語、英語
ISBN
978-4-908526-39-8

小樽市手宮地区は、150年ほど前に開拓され、石炭の積出港、港と小樽運河を結ぶ荷役場所として、「人・物・文化」が集まる最先端地であった。この手宮地区に「十間坂」という急勾配の坂道がある。この坂道は、その名のとおり、十間ほどの広い道幅(約18m)を持つが、V字型にカットされた岩場の頂上付近で「行き止まり」となり、その先の眼下には、小樽の中心街が広がっている。正にこの不可思議な光景が、この歴史深い手宮地区の生活・文化を保ち続けてきた痕跡なのである。

この十間坂では、100年余りの間、小樽中心街と手宮地区を結ぶ道路計画が幾度となく検討された。しかしながら、そのたびに手宮地区の賑わいが小樽中心街に奪われることを危惧する地元商店街や住民の反対により、計画は断念されてきた歴史がある。結果として、この十間坂のふもとに広がる手宮地区は、小樽の歴史が始まった当時の面影を残し、もち屋や銭湯、庶民的な商店街などが未だひっそりとたたずみ、昔ながらのコミュニティーを保ち続けてきた。しかしながら、こうした歴史・文化を育んできた手宮地区も、近年、住民の高齢化や世代交代による商店の廃業、持ち主不在の廃屋や建物の倒壊が加速化する一方、道外資本のホテル建設が現れるなど、新たな機運が見受けられる。

自分は、こうした坂の現実や過去からの痕跡を探り、十間坂の行く末を見守っていきたい。

― 谷口能隆