「地平」"Chihei"
CASE TOKYOでは6月30日から8月3日まで、『地平』の復刊にあわせ「地平」展を開催いたします。
『地平』は1972年4月に創刊以降、第10号まで5年間にわたり刊行された写真同人誌です。当時、大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ専門学校・大阪)の教員を務めていた百々俊二を中心に、博多を拠点に写真活動をしていた20~24歳の学生・教員仲間とともに制作、刊行されました。激動の社会情勢を背景に、日本における写真表現が大きく揺れ動いた時代。メンバーのひとり黒沼康一は、『地平』が発信するメッセージを次のような言葉で表しています。
カメラはぼくらの武器だ。自己表現に終止する回路を断て。写真は閉塞した感性を脅す凶器のようなものです。見たいのはきみの写真でなく、きみの写真が開示する世界なのです。
今は亡き黒沼の残したアジテーションは時代を超え、今を生きる写真家たちをも共感させ挑発しました。そうして、1977年9月に休刊以降、41年の時を経て『地平』の復刊が決定。百々を含め、20~70代の各世代の写真家7名が集まり、「大阪」をキーワードに2ヶ月間の撮影を決行しました。メンバーには、百々俊二、阿部淳、野口靖子、山田省吾、松岡小智、赤鹿麻耶、浦芝眞史。各世代、各写真家の写真表現のアプローチが何を生み出すか。会場では、写真集に未収録の作品も展示いたします。
Events
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飯沢耕太郎 × 中藤毅彦 トークイベント「ストリートスナップ再考」2018年7月21日19:00-20:30ゲストに写真評論家の飯沢耕太郎氏、写真家の中藤毅彦氏をお招きしてトークイベントを行います。
60年代半ば以降、森山大道をはじめとする多くの写真家がストリートスナップを精力的に撮り続けてきました。日本では数多くの写真集が刊行され、欧米の写真文化とは一線を画す独自の写真文化が形成されました。また、中平卓馬らによるProvokeなど、伝達手段(アウトプット)としての写真同人誌に影響を受け、70年代は写真家たちが自らが発刊した媒体誌上を発表の場とした時代でもありました。
今展示にて出版した「地平」は1972年に創刊、1977年10号での休刊以降、約40年ぶりの復刊となります。当時のメンバーは百々俊二のみ、阿部淳をはじめとする新メンバー6人を迎え、20代から70代までの幅広い写真家によって構成されました。
近年、肖像権などの問題やデジタルメディアの急速な発展により変化するストリートスナップをテーマに、2人のスペシャリストによる貴重なクロストークを開催します。
Artist
百々俊二 Shunji DODO
1947年大阪生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科卒業 、同年東京写真専門学校教員に。1972年に大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ専門学校・大阪)教員となり、1998年同校学校長に就任。2015年には入江泰吉記念奈良市写真美術館館長に就任。写真家であり写真教育者としても写真と関わり続けている。
写真集『楽土紀伊半島』で日本写真協会年度賞 、写真集『千年楽土』で第24回伊奈信男賞。写真集『大阪』で第23回写真の会賞と、第27回東川賞飛彈野数右衛門賞を受賞。